ぐらんぐるめぞんじゃぱん

20代が東京から発信する食・お酒についての関心事。

飲食店における生産性問題

f:id:akhrkun:20200517183350j:plain

飲食店で働くとは?

大きな産業であるはずなのに、飲食業の立ち位置は正直なところ高くはない。

ロイヤルホストの菊池会長の講演をもとに外食の未来について考える。

 

業界がかかえている問題とは?

f:id:akhrkun:20200517235252j:plain 

1.低い生産性

長い労働時間、サービス労働もあり、長時間の立ち仕事、仕事時間が夜までかかることが多い、土日祝や年末年始などに休みを取りにくい。

限りある売上は従業員で分配しなければならないが、少ない人数ではお店をまわすことができない。店内の販売のみでは限界があるのは、商品の生産・提供・消費に「同時性」があるからだと指摘されている。

 

2.高すぎる期待値に対して低い対価

飲食において求められることは多い。お客様の対面でのサービスはもちろんとしてその裏側の準備も含めてである。海外ではチップなどを通して直接サービスに対価を払う仕組みがあるが、日本にはない。

探究心が求められ時間や負荷がかかる仕事にも関わらず賃金に反映されないのは、季節や曜日ごとの不安定さがあることも要因だ。

サーバー(サービス提供者)が正当な評価を受けているとはまだ言えない世の中にある。

 

3.「内食」「中食」の高まり

年々、外食への平均消費支出は落ち続けている。

食事は毎日摂取するものではあるが、「節約したい項目」「贅沢したい項目」で両方とも1位になる二面性を抱えている。

家で素材から調理する「内食」と、外食と内食の間にあたる「中食」の市場が過熱している。改めて外食の必要性と価値が再度見つめなおされている。

 

 

4.客席×客単価の売上構造に依存している

1にもあるように店内の販売には限界がある。飲食店の売上の方程式は未だに「客席

×客単価」で説明されることも多いし、繁盛店かの指標を坪30万超えかなどで語られることもある。

また店舗展開をすることが企業の成長だと認識していて、とくにチェーンは規模の経済を追求している。結果自社の共喰い(カニバリゼーション)を起こしたり、増収なのに減益の事業構造を作り出してしまうことが見受けられる。

 

5.人口減少

世界人口は増加し続けているが、日本は人口が減少の一途を辿る稀有な国。今経済成長を続け、成熟している国も人口減少の可能性はある。外食産業のみならず日本は良い意味でも悪い意味でも前例となる国となった。

とりわけシニア世代の人が飲食に対しての出費をリードしていた分、若年層に対してのアプローチが求められるなど世代の区分けも必要かもしれない。

 

6.仕入れ価格の高騰と上げられない販売価格

失われた20年といわれ長らくデフレがあり安価で食べられるものが市場を席巻していた。その反動でインフレ下でも価格を上げにくいものがある。特に既存の商品は難しく、牛丼を100円値上げするのも大変な出来事であった。しかし材料費は高騰の一方で利益構造を従来の方法では確保できないお店もある。

 

f:id:akhrkun:20200517235456j:plain

生産性の方程式

生産性=(売上ー仕入)/従業員数

 

生産性をあげる為に

①付加価値の向上

②新しい市場の創造

③従業員、労働時間の削減

 が求められる。

 

f:id:akhrkun:20200517235614j:plain

解決へと導く方法はあるのか。

 

1.海外への出店

新しい市場の開拓。和食はユネスコにも登録され、注目されているがまだまだ企業としての出店は限りなく少ない。注意しなければならないのは海外進出だけが目的となってはいけないことだ。

 

2.最新技術、AIの導入

調理機材、予約台帳、レジシステム、キャッシュレス、ペーパーレスと最新技術の導入には慎重な企業が多い。積極的な採用は効率化を大幅に進めるし、生産性をあげることに直結する。

ロイヤルホールディングスが運営するGATHERING TABLE PANTRYはまさしく技術を詰め込んだ次世代の運営に向けたテスト店舗である。 

 

3.フードロス問題

仕入れ原価のダウン。ロスが増えれば当然原価率は上がり利益率は下がる。SDGs(Sustainable Development GOALS)世界を変えるための17の目標は外食産業と密接な関わりを持っていて、環境問題に取り組む企業は熱い視線をあびる。食の将来性は、食料不足や動物性タンパク質などのトピックは世界で議論されている。

 

4.店外販売

テイクアウト、デリバリー、ECサイト等。店外に販路をつくることで新しい市場の拡大が見こめる。従来の売上構造の制限を超えて売上を作ることができる。

 

5.スタッフ教育

肉体労働やシステムの単純作業は誰にでもできる。サービスの要である感情に訴えかける労働やその場の会話はお店で働く人にしか出来ない。働く人にかかる負荷は大きくなるがブランドの強化になり、強い付加価値となる。

 

 

2020年は飲食産業において大きな転換期となった。

縮小していく市場もあるが、ビジネスを拡大するチャンスとも取れる。

飲食産業と和食の将来性が期待される。