ぐらんぐるめぞんじゃぱん

20代が東京から発信する食・お酒についての関心事。

活発な経済のために

今回の議論はリチャード・カンティロンの『商業試論』(名古屋大学出版会、1992年)を受けてである。

 

まず、経済活動を活発な状態に保つための経済的環境を論じる前に欠かせない前提がある。それは、「貨幣量の増加は消費の増加を生み、価格の高騰を引き起こす」というものである。

 

貨幣量が増えるには2種類の方法がある。まず一つ目に、金山や銀山の発掘によるものである。この場合、先に述べた前提により、多くの国民が流出する事態が発生する。二つ目に諸外国との貿易差額によるものであるが、こちらの場合では恒常的に大多数の住民が国内に流入する。しかし年々恒常的にこの差額で貨幣の著しい増加があるならば、それは金山・銀山の発掘と同じ結果をもたらす。それでも、消費が増えると輸入も同時に増えるのでこの差額は減ずることが一般的である。

 

この貿易差額による貨幣の増大は極めて重要である。なぜなら、諸国家の相対的富は国が主として保有する貨幣の量にあるからである。貿易差額を有利に保つためには輸出品の定評や海運の良さは欠かせない。しかし繰り返しになるが、貨幣の増大は価格の高騰を生み出し、国にとって危険な状態をもたらしうる。そこで、国は貨幣を引き揚げ、流通の外に置いて保管するべきであり、そのための目安として「地主たちとの賃貸契約と地代」を判断基準にするとよい。

 

 さて、豊富な貨幣量の保有が近隣諸国に対して有利になる根拠であるが、以下の二つに分けられる。一つ目に人件費があげられる。人件費の高さは流通している貨幣と相関関係がある。二つ目に、国家の収入として大きな金額が集まるからである。仮に敵対している二人の君主がいて、一方は多くの貨幣を持っており、もう一方は、貨幣は持っていないが敵の貨幣全部の2倍以上の価値のある領地を持っているとすれば、有利なのは前者である。土地の譲与は異議申し立てや取り消しを受けやすい、いわばリスク付きのものに対して、貨幣はこの上なく安心だからである。

 

 ここで、貨幣量を増やすもう二つの方法を提示する。それは、企業者や個人が利子を払うことを条件に外国の取引先から貨幣を借り入れるか、外国の個人が株や公債を買うために、彼らの貨幣をその国に送ってくる場合である。この場合によって、企業者たちは利益を期待して製造所を作り、消費の増大によって国家はより多くの消費税を受け取ることになる。しかしながら、一時的に利益をもたらすものの、その結果はやっかいで不利なものとなる。まず、毎年の利子の支払いである。さらにもっと厄介なのは外国人の意のままにされることである。彼らが貸付をやめようと思えば、たちまち国家は困窮に陥り、一度国が衰退するとその後の借り入れは信用の関係で困難なものになるからである。やはり、現金の量を増やすには貿易差額でしかない。

 

 現金量の増加以外に、一国において有益であり、かつ必要なものがある。それは金利である。利子は信用と危険によって定められるものだが、高利の場合でもそれらは有益であるとされている。もともと資金が無く企業者として生きていく術が無かったとしても、借り入れによって従属者の立場から主人として流通に参加できるのである。

 

 最後に経済的環境について別の視点から言及する。その視点とは、戦争と貨幣の関係である。先ほどのトピックであった利子に関して言えば、戦争には巨額の出費を行う時に利子の価格は上がる。軍需物資を供給する多数の企業の進出と、増大によって借り手が増えるという理由と、戦争状態である危険性からである。外国から資金を調達した時には、以前に述べたように、やがて外国の意のままにされる可能性がある。また、暴力によって現金を増やす方法も、ローマ帝国の例を見ればわかるように必ず衰退の道を辿るのである。

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